山椒太夫
ご存知森鴎外の作品(原作は安寿と厨子王)をDVDで見ました。いつものツタヤ半額セールだからです。監督は溝口健二、モノクロの古い映画です。当方は、最近の映画にどうも興味が沸きません。派手なアクション、何でもありのCG、マンネリのアニメと、どうも年に合わない気がするのです。そこで、ツタヤの半額セールがあるたびに古い映画を借りてきます。古くても名作は心に響きますから。
さて、ストーリーは有名すぎてお話するまでもないのですが、一応書きましょう。時は平安末期、主人公の厨子王は、地方の偉いお役人の子供でした。ある時、父親が策略にはまり失脚したため、母子で京に逃げました。しかし、その途中、人攫いにつかまってしまい、不幸な人生を歩むことになってしまいました。しかし、厨子王は逃亡したのち出世し、最後に母と再会するというお話。といっても、決してハッピーエンド的ではありません。それは、全体に渡る悲壮感がもの凄いからです。
奴隷にされても、社会のシステムががちがちになっていたからどうにもなりません。当時は、どんなに悪いと分かっていても、社会全体が直らないと直せないシステムでした。今でも同じようなものはありますね。人間が社会を形成している以上、決して無くならないものです。強いものが富の多くを集め、その子孫だけがそれを引き継ぐ。お金のあるものが常に良い立場にいる。貧しいものはいつまでもそこから抜け出せない。少し前の日本は富の平等性が強かったとおもうのですが、今の日本は二極化が明確になって来ています。貧富の差が激しい国になって来ているのです。
厨子王は、安寿の支援のもと、山椒太夫のもとから逃げ出し、関白のもとに直訴しました。普通なら無体な話しですが、肌身離さず持っていた父の形見が功をなし、今でいう県知事に任命され山椒太夫を成敗しました。この辺は御伽噺の世界ですが、一途な考え方は見習いたいものですね。今の、日本ではくさい芝居と思われるでしょうが、このような人もいないと世は良くならないと思います。
古い映画は、忘れてしまった古き良き日本が見える。そんな気がします。その中には、今の日本人が忘れてしまった、文化や習慣が残っていると思いました。
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